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マクシム・コフトゥン:「最初のエレメントで「死んだ」」 ~羽生・ハンヤン衝突の影響

2014GPS中国杯男子シングルで優勝したコフトゥンのインタビューがありましたので紹介します。公式記者会見後に、ロシアのスポーツ記者に対してウォームアップ中の羽生結弦とハンヤンの衝突事件のあとの心境を語っています。気心がしれた相手なせいか、感じたことをはっきりと語っている印象です。

辞書なしで駆け足で訳したので、不備があったらご指摘いただけると嬉しいです。

* * *

マクシム・コフトゥン:「最初のエレメンツで「死んだ」」


http://winter.sport-express.ru/figureskating/reviews/50622/
エレナ・ヴァイツェホフスカヤ(上海)

グランプリシリーズ上海の金メダリストが、いかに演技がつらかったかについて語る

男子の競技の記者会見に、ウォームアップ時の衝突で怪我をした羽生結弦は来ることができなかった。医師が緊急で診ていたからだ。金メダリストであるマクシム・コフトゥンも、グランプリの舞台で自身として初めての15ポイントを獲得したにもかかわらず、経験したことすべてに傷つけられたのは明らかだった。


こんな状況の展開に全く準備はできてなかった。ウォームアップに入ったときは、スケーティングに100%準備ができていると感じていて、筋肉の1つ1つを感じていた。それに加えて、マクシム・ザヴォジン(コーチ)が激励して熱くしてくれた。ウォームアップの直前に、もっと熱くなれるよう彼と即興で喧嘩みたいなことをしたりもしてた。上海は今シーズン初めての大会だけど、そんなに強い緊張感はなかったくらい。滑る準備は十分にできていると知っていたから。でも今は、ご覧のとおりだ。腕も足もまだ震えてるし、目もピクピクしてる。リンクに入った時には、誰がどんなふうにすべったかなんて全然イメージも持ってなかったのに。


(羽生結弦とハンヤンのウォームアップでの衝突は見ていなかったのですか?)

見てなかった。見たときにはすでに2人とも氷上に倒れていた。ひどいものだった。ウォームアップが中止されたのはすぐじゃなくて、エレナ・ブヤノワ・コーチは、自分が練習を続けるよう叫んでた。ちょうどジャンプの1つを跳ばなくちゃいけなかったんだけど、人がリンクのほとんど足元で倒れてるのに、どうやって跳べるんだ?いずれにせよ、自分にはできないとわかった。

それからウォームアップが中止になり、選手は更衣室へと送られたんだけど、ウォームアップが継続されるのか、いったい何が起こっているのか、誰も理解してなかった。それだけじゃなくて、自分の足が急に強くしびれたように感じてた。

リンクで何をしなくちゃいけないのか、考えることもできなかった。コーチはできる限り励まし続けてくれたけど、通常の感覚と気持ちが戻り始めたかと思うと、数秒後にはまた消えてしまったり。

加えて、やはりこの大会が最初の大会だということもある。これまで観衆の前でフリーを通しで滑ったことがなかったから。最初の大会といのは、何が正しくなかったかを理解し、ミスを修正するためにも必要なものだ。ちょうどショートで、アクセルを後半で跳べるよう2つ目のジャンプと3つ目のジャンプの間にスピンを入れ込むのはやはりその価値はないということを、滑った後でようやく理解したように。

結局、いつものとおりになった。すべてがおさまって、またどこか新しい面から人生に後押しされた、と思い始めたということはあったけど。


(つまり、後押しされても大丈夫なくらいあなたは強いということですね。つらい試練は強い人間にだけ与えられるとはよく言ったものです。)
でもちょっと大きすぎたかもしれない。記者会見で座ってるとき、腕で足を押さえて、腕は足に押し付けて、自分が震えてることがわからないように努力してた。今でも震えてるくらいだから。足に力も入らない。リンクに入ったときには、自分では比較的落ち着いた状態だったと思ってたんだけど。


(プログラムを楽にすることは考えませんでしたか?大きなライバルたちにこんな嫌なことがあったのだからと。)
さっき言ったけれど、彼らの滑りを知らなかった。それに、ヤンも羽生も、リンクに戻ったからには素晴らしい滑りをしたんだと確信してた。自分がリンクに入る直前まで、衝突がこれほどまでに深刻なものだったとは疑ってなかったから。

自分が「死んだ」のは、最初のエレメントをしてからだ。サルコウはとても単純なジャンプだと受け止めていたし、練習ではウォームアップなしでもほとんどできてる。サルコウの出を難しくしてるくらいだ。でも、ジャンプに入ろうとして、強く踏み込んだら、あるべき風とは何かがまったく違うと空中でわかった。一番最初から全部食い違っていて、最初の一歩から、なぜかいつもの形とは違う様にジャンプに入ってしまった。

すぐにもう滑りたくないという感情で急に覆われて、ただすべてを早く終わらせたいと思ってた。滑りとかエレメンツとかよりも、自分に何が起こってるのかまったくわからないとばかり思ってた。正直言うと、今まで自分の頭の中でこんなにたくさんの思いが一度に浮かんだことは覚えていない。すべてのことが頭に浮かんだ。考えなければいけなかったこと以外は。


(もしかすると、単に大会への期待で燃え尽きただけなのでは?)
何が原因になったのかはわからない。いちばんひどい瞬間だったのは、リンクに入る準備をして、リンクの壁に向かったとき、まったくおかしな光景を目にしたんだ。リンクはぬいぐるみで埋め尽くされ、観客は立ち上がって泣き叫んで、リンクの扉のまわりの空間が血でいっぱいだったんだ。しかも、これらすべては、実際に何が起こったのか全く知らないときだったんだ。意図的に何も言わなかったけど、自分には自分のやらなければいけないことがある、その他のことはすべて自分にはまったく関係ない、と自分に向かって叫んでた。でもあたりはすべて血だらけ…。それでも、なんとかシーズン最初の滑りで4回転を3つ揃えなくちゃいけないと。


(あるところで、あなたが最後までプログラムを滑りきれないんじゃないかという気が私にはしたのですが。)
同じような気持ちが自分にもあった。それがほとんどすぐ起こったんだ。でも、どれだけの練習を、しかも一番きつい練習をしてきたのに、それが無駄になるのが本当に悔しいと思った。高地トレーニングのときや、靴の問題があったときの。それが自分をどんな状態にまで追い込んだか想像もできないでしょう。怒って、コーチに大声をあげて、リンクの壁を殴って、でも練習はしていた、吐くまで。それがなんのためだったのか?戦うことをやめるためだったのか?

滑っている間にそんなことも考えた。ステップシーケンスでやっと自分を取り戻し始めた。ステップでは体幹の動きで多くの体力が奪われて、息もひどく切れる。それに耐えられたんだから、プログラムを最後まで滑りきらないのは正しくないと。


(使い古された言葉ですが、私にできるのは、つらい経験も経験だということを繰り返すだけです。)
その通りだと思う。頭ではわかってるんだ。起こったことはすべて、特に自分を通じて起こったことは、有益な経験というだけでなく、金では買えない経験であると。でも、それでもとても失望している。


(キスアンドクライで座って点数を待っているとき、何を考えていましたか?1位のままでいられると想像しましたか?)
そんなことはなんの意味もなかった。頭にあったのは、1つだけ。「ああ、やっとこの地獄が終わった」って。

テーマ: フィギュアスケート | ジャンル: スポーツ

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コメント

No title

おはようございます。
先日、ブログ引用の許可を頂いたcocoamilk311です。
その節は、ありがとうございました。

先程、やっと記事をUP出来ましたので、お知らせ致します。
ご確認くだいませ。

http://ameblo.jp/cocoamilk311/entry-12002822668.html

いつも、貴重な記事を届けてくださってありがとうございます。
これからも、ユーリ様のブログを楽しみに拝見させていただきます。

cocoamilk311

2015/03/18 (Wed) 07:33 | cocoamilk311 #- | URL | 編集
No title

グエン君は第一滑走なのに、オーサーコーチに自分より羽生君に付いててあげてと言ったそうですね。
コフトゥン君がここまで動揺していることを思えば、彼より若いグエン君が、いかにリンクメイトとはいえ、羽生君を心配してコーチに言ったことに感銘を受けます。

2015/01/15 (Thu) 06:06 | いちごみるく #T.9YoUd6 | URL | 編集
Re: No title

>tomokoさん

> リンクが血まみれなのではなく、周りの空気が「血まみれ」のような雰囲気だったと言ってるのでしょ?

ロシア語の文を読み直しましたが、リンクでも空気でもなく、リンクに入るところの扉のあたりが血まみれだったとコフトゥンは言っていると思います。もしかしたら私の理解が足りないのかもしれませんが、ご了承ください。

2014/11/14 (Fri) 22:06 | ユーリ #- | URL | 編集
No title

リンクが血まみれなのではなく、周りの空気が「血まみれ」のような雰囲気だったと言ってるのでしょ?

中国杯から帰ってきた友人が「中国の羽生くんファンがエキセントリックになってて怖かった」と言ってました。
かなり大きな声でずっと泣き叫んでいた中国人のファンの人がいたそうで、日本人はちょっと引いていたと言ってました。

確かにあの空気の中、滑るのは大変だったでしょうね。
コフトゥン選手には同情します。

でも、少しばかりナイーブなんじゃないの?とも思います。
それじゃ大きな大会でのプレッシャーに勝てないよ、とも。

2014/11/14 (Fri) 21:48 | tomoko #lGE2SULs | URL | 編集
コフトンくん、頑張ったね

いつも、ロシア記事を読みやすく和訳してくださり、ありがとうございます。

ほんとに今回の中国杯は、第二グループの選手たち全員が、辛いものを抱えての演技となり、不本意だったことと思います。

アクシデントを見てしまうことで、どれだけ、精神的な影響をうけてしまうかということを、ここまで具体的に赤裸々に語ったものを読んだことはありません。

拙ブログでご紹介させていただきました。
http://ameblo.jp/tuk-masa/entry-11951454692.html
何かありましたら、よろしくお願いいたします。

2014/11/14 (Fri) 05:34 | まさ #- | URL | 編集
お願い

はじめまして。
記事は、以前からこっそり読ませていただいてました。
愛情いっぱいのロシア語翻訳、読んでいてほっこりしてきます。ありがとうございます。

紹介していただいたコフトンくんの状況から、彼のタフさを改めて感じています。
(オリンピックの選考も)

事後報告で申し訳ありませんが、私のblogで、こちらの記事にリンクをさせていただきました。
不都合があれば、削除させていただきますので、ご確認いただければ幸いです。
http://ameblo.jp/ibukiyamadaisuki/entry-11951642440.html

2014/11/13 (Thu) 01:18 | ☆ rei ☆ #Lb0elJ46 | URL | 編集
ありがとうございます。

コフトゥンくんのインタビュー記事の翻訳、ありがとうございました。
あの時のあの場の選手たちは、どんな気持ちだったのだろう・・・と心配でした。こうやって、コフトゥンくんが自分の気持ちを素直に語ってくれたのは、貴重だと思いました。
テレビで見ながら、あの異様な状況の中で最後まで滑りきった彼を、本当にタフネスで立派だと思いました。
選手の立場からという視点でブログで紹介させていただきたいと思います。

2014/11/10 (Mon) 23:37 | 未鳥 #yLLEkkY. | URL | 編集
No title

大変貴重なインタビューと思います。
翻訳ありがとうございます。
どんなにか動揺したであろうか、他選手たちの心情が、率直に吐露されていますね。
拙宅ブログで是非、リンク、ご紹介させていただきたいと思いました。

2014/11/10 (Mon) 16:05 | momomaru #2VC.mNBw | URL | 編集
No title

はじめまして。
2年前のGPS中国杯でもナンソン選手とリッポン選手の衝突があり、そのことで他の選手たちが大変動揺し、演技に影響が出たと聞きました。
今回もみんな、やりにくかったろうと想像はしていましたが、ここまでコフトゥン選手がショックを受けていたとは思いもしませんでした。スコアが出た時のうかない顔も思ったより点数が出なかったとか、そういうリアクションなのかと思っていました。
この記事を読んで、いろいろ知ることができました。

翻訳してくださって、本当にありがとうございます。

2014/11/10 (Mon) 11:21 | #- | URL | 編集
No title

情けない男だね、この人。

2014/11/10 (Mon) 02:50 | #- | URL | 編集
翻訳感謝します。

コフトゥン選手にも地獄だったのですね。
悲惨な状況に負けず優勝できて良かったです。
今後このようなことが起こらないように祈ります。
衝突した選手は即担架で運び出すようなルールを作り、他選手が影響なく滑る環境を整えてあげるべきだと思いました。

2014/11/09 (Sun) 23:21 | #- | URL | 編集
選手の本音

選手すべてにつらいできごとだったことはよくわかりました。
コフトン選手の本音が聞けてよかったです。
当然のことなのかもしれないけど、本音は自分の心配のことだけでしたね。(別にコフトン選手を責めているわけではない、ただ、ああ 彼はそうだったんだ、と思っただけです)

ま、選手というものはいかなる時でも、どんな場合・展開をも想定していなくてはならないということなのでしょうね。
試合でも練習でも、何が起こるかわからないのだから。

2014/11/09 (Sun) 23:03 | Wind #y65JgXPI | URL | 編集
#178にて・・・・。

ジー君と書いてしまいましたが、グエン君の間違いでした。大変失礼いたしました。

2014/11/09 (Sun) 21:38 | 寝ぼけ熊 #QmezPhiA | URL | 編集
No title

訳していただき有難うございます。
他の選手にも影響があったのはわかりましたが、ここまでだったとは・・・。
激突した2人の不可抗力のミスとは言え、他の選手にとっても不運だったと思います。

2014/11/09 (Sun) 17:17 | coto #kEawCMz. | URL | 編集
翻訳ありがとうございます。

コフトゥン君の言葉が聞けて良かったです。
優勝したのに暗い顔で・・・。羽生君、カン君の容態も心配ですが、他の選手の衝撃も如何程だったのか・・・。正直、二人はまだ若いのだし今後のためにも棄権して欲しかった。
今回の事を美談にする雰囲気ありますが、決して美談では無いと思います。
リアルタイムで見ていた自分も、テレビの雰囲気に飲まれつい応援しましたが、ジー君、イスラエルの選手(ごめんなさい、名前が出てこないです)、ドーンブッシュ君、演技後の二人、最終滑走のコフトゥン君を見て後悔しました。
あんな雰囲気で滑っても、誰も納得できないのではないか?
ファンやマスコミ、スケ連も考えるべきでは?
頭を打つ危険性をもっと考えて欲しいです。
棄権する勇気を教えることも大人の責任ではないかと思いました。
今は只、二人の無事を祈るのみです。また、他の選手の皆さんにも今後影響がなければ良いのですが・・・。
長々と大変失礼しました。

2014/11/09 (Sun) 15:41 | 寝ぼけ熊 #QmezPhiA | URL | 編集

コフトゥンだけじゃなく他の選手も事故の影響を受けてましたね‥

グエン君なんて第一滑走で、コーチも羽生君に付きっきりだから不安だらけだったと思います。
みんな滑りがぎこちなかった‥

2014/11/09 (Sun) 12:23 | #- | URL | 編集
翻訳記事ありがとうございます

はじめまして。
コフトゥン選手のインタが聞けてよかったです。
今回のアクシデントでは、他の出場選手のダメージいかばかりかと悲しく思っておりました。
コフトゥン選手が優勝してうれしかったです。

私のブログで記事を紹介させていただきました。事後報告申し訳ありません。

2014/11/09 (Sun) 11:31 | 観世 #hT4iJc3M | URL | 編集
No title

コフ君のインタ内容重いですね。
読んでいると彼の気持ちが伝わってきて涙でました。
ファンでさえ動揺して感情的な発言でネット上は大混乱だったのに、近くにいた選手にとって地獄なのは当然ですね。
テレビじゃリンクが血まみれなんて分からなかったから、それを想像するだけでゾッとします。

キスクラで深刻な顔してたのはそのためなんですね。
彼はきっと心根が優しい子なんじゃないかと思います。

また、コフ君も羽生君もハンヤンも元気に滑って笑顔で表彰台を飾れるようになってほしいです。

2014/11/09 (Sun) 11:10 | mimi #xU4SH92g | URL | 編集

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